第37回日本顎関節学会学術大会に参加してきました。
- 2024年7月22日
- 学会・セミナー等
いつもお世話になっております。高崎ハルナモ歯科の深澤です。
2024年7月12日の午後と13日は医院をお休みにさせて頂き、「顎関節上関節腔の穿刺と洗浄療法」というハンズオンセミナーに参加するため、徳島で行われた第37回日本顎関節学会学術大会に行ってきました。
口が開かない、口を開けると音がする、口を開けると痛いなどの症状があるのが顎関節症の特徴ですが、顎関節症は原因により4つのタイプに分かれます。顎を動かす筋肉が咀嚼筋なのですが、咀嚼筋が顎関節痛の原因になっている場合を咀嚼筋痛障害(Ⅰ型)と、靭帯などが原因で痛みが出ている場合を顎関節痛障害(Ⅱ型)といいます。関節円板が原因となっているのを顎関節円板障害(Ⅲ型)といい、顎を動かしたときに円板が元の位置に戻ってくるのを復位性関節円板前方転位、元の位置に戻らないのを非復位性関節円板前方転位といい、Ⅲ型はこの2つにさらに分類されます。顎関節の骨が変形して症状が出ているものを変形性顎関節症(Ⅳ型)といいます。
顎関節症の症状の多くは、月単位や年単位がかかりますが時間経過とともに症状が自然に改善していくことが多いです。そのため治療は、治癒するまでの期間で顎関節症に関連する不快な症状をいかに軽減していくかも一つの目標になります。またこれは私個人の考えですが、自然治癒することがほとんどである顎関節症において、治療よりもむしろ他の疾患との鑑別診断が重要ではないかと考えています。一例ですが、骨軟骨腫などは顎関節症と同じような症状をきたすことが多く、また悪性転化することもあります。この他にも自然治癒せず早期に治療介入が必要な疾患が、顎関節症と同じような症状をきたすこともあるので、しっかりとした鑑別診断をして自院で治療を行うか、高次医療機関に紹介するのが重要だと考えています。
顎関節症の治療法としては、マッサージなどの理学療法、鎮痛剤などの薬物療法、マウスピースなどを使用したアプライアンス療法などがあります。9.5割以上はこれらの治療で改善するのですが、残りの0.5割ぐらいで観血的な処置が必要になります。観血的な処置は顎関節人工関節全置換術などがあり、上関節腔の穿刺はもっとも簡単な観血的な処置に分類される処置です。
先述の顎関節症の分類で、非復位性関節円板前方転位がありましたが、これは関節円板が本来の位置よりも前方に移動してしまい、口がほとんど開かなくなることがあります。上関節腔の穿刺とは、このような時に関節腔を生理食塩水で洗い流し癒着や炎症物質を取り除いた後に、麻酔を直接関節腔の中に入れます。麻酔を入れたあとに、パンピングという顎を動かす処置をしてあげると口が開くようになります。この処置は劇的に開口障害を改善することができ、術前術後の変化は非常に目を見張るものがあります。研修医の時に上級医の先生が、この処置を行い何人もの患者さんの開口障害を改善しているのを見て、自分もこの処置をものにしたいと思い、今回勉強する機会を得ました。
ハンズオンでは、講義のあと班に分かれて実習を行いました。講義では顎関節の解剖学から、顎関節鏡などの非常にアドバンスな内容まで含んだ充実した内容でした。その後、いくつかの班に分かれて自習を行いました。自習では上関節腔の把握方法から穿刺までの一連の流れを実践に即して教えて頂きました。その中で、穿刺は手技自体の難しさよりも解剖学的な位置の把握の重要性を講師の先生が強調されていました。手技を自家薬籠中のものにできるように、解剖学を含めて今回教えてもらった手技や考え方をしっかり復習したいと思います。