JIADS エンドコース第1回目に行ってきました。
いつもお世話になっております。
箕郷町コープの敷地内で開業している高崎ハルナモ歯科院長の深澤です。
2月22日(土)、23日(日)は医院をお休みにさせて頂き、JIADS(The Japan Institute for Advanced Studies)のエンドコースに行ってきました。
JIADSとは、小野善弘先生と故中村公雄先生が1984年に立ち上げた勉強会が前身になり、1988年に設立され、日本で有数の会員数を誇るスタディーグループです。
設立以来、歯科雑誌で紙面を賑わすような超1流の歯科医師が数多く所属しています。
エンドはエンドドンティクス(Endodontics)を略した言い方で、日本語だと歯内療法といいます。
歯の中には、神経と血管の複合体である歯髄というものがあります。
簡単にいうと、歯の中に入っている神経のことです。
虫歯が進んでしまって痛みがでるのは、虫歯が歯髄を刺激して炎症を起こすからです。
抜髄(歯の中の歯髄をとることです)した歯は、ガッターパーチャーという防腐剤を、神経の代わりに詰めます。
神経を取ってから数年後に、一定の確率で歯の根の先に、膿の袋ができることがあります。
これを根尖性歯周炎といいます。
放っておくと、痛みが出たり、歯根周囲の骨を溶かしたりしてしまいます。
エンド治療の目的とは、抜髄後の根尖性歯周炎を未然に防ぐことと、もし根尖性歯周炎になったら2度とならないように治療することです。
セミナー会場は銀座にある医療法人貴和会銀座診療所で行われました。
前出の小野先生と中村先生は、御二人で大阪で開業をされました。
その後、銀座に出した分院が医療法人貴和会銀座診療所です。
場所としては銀座シックスの目の前です。
貴和会の診療所は歯科医療に携わるものなら、歯科の聖地の一つとして挙げる場所です。
今回、その聖地でセミナーを受けさせていただくということで、非常に身が引き締まりました。
初日にあたる22日は、まず全員の自己紹介から始まり、中には研修医終了後すぐに受講されている先生もいらっしゃいました。
勤務しているとセミナーなどの外部の研修に参加するのを露骨に嫌がる院長や、酷いと嫌がらせをしてくる人さえいます。
ここに書ける内容だけでも、私自身もセミナーにいくための有給申請を却下されたり、セミナー中に出勤要請の電話がかかってきたりされたことがあります。
その他、書けないような嫌がらせもされたりしました。
なので、早い時期から、超一流の先生のセミナーを受けられる環境にあるのは非常にうらやましく思います。
自己紹介が終わると、京都市で開業されている吉川デンタルクリニック院長の吉川宏一先生から、ジアーズエンドの総論を講義頂きました。
吉川先生はジアーズのエンドコースを立ち上げた立役者でもあられます。
先生の臨床哲学を感じられる素晴らしい講義でした。
特に惹かれたのは、歯科医師は職人だから昨日よりも今日、今日よりも明日と自己研鑽を積んでいく必要があるとのお言葉でした。
また根管拡大のときに、根管(歯の根っこのことです。)の3次元的な形をイメージして行う必要があるといわれていました。
エンドの基本の「き」ですが、このような基本を徹底的に高めて実践できるのが超一流と自分との差なのだと実感しました。
その後埼玉県川口市でデンタルクリニックKを開業されている渥美克幸先生から、JIADS Endo Course 5+1 Conceptについての説明がありました。
渥美先生は、エンドで有名なだけでなく、接着や感染制御でも非常に高名な先生です。
まずコンセプトの一つである機械的拡大・形成について90分間みっちりと講義を受けました。
ジアーズの機械的拡大・形成は、今まで自分のやってきたやり方や考え方とは全く違うものでした。
ですが、講義を聞くと、非常に生体のことを考えたコンセプトでまさに目からウロコでした。
私自身も含めて多くの歯科医師が、根管注1をどの程度拡大すべきかというのを疑問に思うところです。
専門書には、このぐらいとは記載されてはいます。
しかし、これは著者が経験則として言っているだけで、根拠があるわけではありません。
JIADSのコンセプトでは、これに対して明確な根拠を示してくれました。
私はこれを聞いて、長年の疑問が氷解しました。
昼食を挟んで、午後から渥美先生からJIADS Endo Course 5+1 Conceptの続きである根管洗浄、根管貼薬、根管充填についてのレクチャーがありました。
根管洗浄は化学的根管洗浄と機械的根管洗浄があります。
JIADSのコンセプトでは化学的根管洗浄に対しては消極的な立場で、機械的根管洗浄を推奨していました。
化学的根管洗浄に対して、なぜ消極的な立場をとるのかという理由を聞いて、全てが理にかなっていると思いました。
また機械的根管洗浄のみでも、長期予後を達成している症例を見せて頂くと、化学的根管洗浄のマイナス面を考えると積極的に使う理由がないことが理解できました。
根管貼薬では、かつて使用されていたホルマリン製剤の問題点を教えて頂き、正しい水酸化カルシウム製剤の取扱い方と、使用する理由を教えてもらいました。
根管充填では、JIADSのエンドといえば、かつてはウルトラフィルが有名でしたが、製造が中止になってしまったため、新しい考え方を提示して頂きました。
現代のエンドのトレンドと新しいマテリアルを用いた方法で、ウルトラフィルのように専用の器具や熟練を必要とせず、すぐに取り入れられる方法で、当院でも現在取り入れています。
ちなみに、他の道具類も医院にセミナー終了後すぐに導入致しました。
取り扱い器具が増えて、スタッフは管理が大変だと思いますが、文句も言わずに付き合ってもらい感謝しかないです。
大阪でご開業されている福地歯科医院院長の福地康生先生から、Ni-Tiファイルの取り扱い方と、実習のデモがありました。
Ni-Tiとはニッケルチタンのことで形状記憶効果と超弾性の性質を持っています。
簡単にいうとよく曲がって、元の形にキチンと戻る性質です。
根管治療を行うのに、非常によい材料なのですが、使い方を間違えるとせっかくの利点を活かせません。
Ni-Tiファイルは各メーカー様々な工夫を凝らしており、それぞれに特徴があります。
今回の実習では、YOSHIDAのREファイルを使用したのですが、商品のパンフレットに載っているような一般的なファイルシークエンスではなく、独自のシークエンスでした。
独特なシークエンスですが、非常に使いやすかったです。
セミナー1日目終了後は、ウェルカムパーティーがありました。
銀座のお店なので、おしゃれで美味しいお店でした。
その後、定宿であるカプセルホテルに泊まり1日目を終えました。
2日目の23日は朝8時30分からスタートしました。
まずは渥美先生のJIADS Endo Course 5+1 Concepの続きで、視野の拡大と画像診断についてでした。
視野の拡大とは、拡大鏡やマイクロスコープの使用のことです。
拡大鏡とは別名ルーペともいい、ドラマ「ブラックペアン」で二宮和也扮する渡海征司郎が手術のときに使用していたのを覚えている方もいるかもしれません。
マイクロスコープとは手術用顕微鏡のことで、脳外科医のドキュメントで、手術中に覗いている機材です。
歯内療法では1ミリ以下の、神経が走行している穴を探したりする必要もあるため、拡大鏡やマイクロスコープは治療には欠かせない道具です。
拡大鏡には倍率があります。
倍率は、それぞれのメーカーが定義をしているので、基準があるわけではありません。
ただ、倍率が上がれば上がるほど、視野が暗くなります。
そのため、ルーペを使用する際は、その倍率に適した光源が必要になります。
光源としてルーペにはライトを付けるのですが、視軸と光軸が一致していないと、拡大のメリットを享受できないため、キチンとした設計の拡大鏡を選択する必要があることをお話されていました。
拡大鏡は倍率が一定ですが、マイクロスコープは倍率を変更することができます。
また拡大鏡では実現できない高倍率での視野を確保でき、視野内の像をすべて録画することができる利点があります。
マイクロスコープのほうが拡大鏡より利点が大きいように思えますが、その一方でメガネのようにかけるだけの拡大鏡と違い機動力がありません。
機動力不足のため決まった場所でしか使用できず、また視野を自由に動かすことができません。
そのため、拡大鏡とマイクロスコープの利点欠点を把握し、使い分ける重要性をお話されていました。
一般的な歯科医院での画像検査は、デンタル注2、パノラマ注3、CTを使って行います。
デンタルとパノラマは3次元の構造物を2次元に置き換えて画像を表現します。
一方CTは、3次元の構造物を3次元で表現します。
CTがあれば、パノラマやデンタルは必要がないように思うかもしれませんが、CTは体動や金属の影響を受け、画像が乱れることがあります。
ひどいときは撮影をしても、画像が乱れていて構造物が全くわからないということもあります。
そのため、これらも使い分けが必要になります。
講義では、デンタル、パノラマ、CTの撮影原理の違いをレゴで説明していただき、理解がかなり深まりました。
その後、福地先生からシングルポイント法での根管充填までの一連の流れ、前歯部の解剖、前歯での根管充填の実習デモがありました。
根管充填とは、神経を取った歯に簡単にいうと防腐剤を詰めることです。
根管充填では、側方加圧法と垂直加圧法という2種類が従来のやり方でした。
防腐剤に側方かまたは垂直に圧をかけて、根管と防腐剤を密着させます。
現在ではシーラーという根管と防腐剤をくっつける材料をメインにして、根管充填する方法が提唱されています。
これをシングルポイント法といいます。
これはシーラーの性質が向上して、生体親和性の高い材料が開発されたのが背景にあります。
手技は圧倒的に側方加圧法や垂直加圧法より簡単です。
ただシーラーを根管内にいれる専用の機材を用意する必要があり、コストがかかるというデメリットがあります。
手技が簡単ということや、ミスをする可能性が少なく治療時間を短縮することができるという、デメリットを遥かに凌ぐメリットがあり、当院でも既に導入しています。
前歯部の解剖は、歯内療法に特化した内容なので、大学の時に受けた解剖の授業より圧倒的に興味深く聞けました。
時に無味乾燥になりがちな基礎医学的な解剖学を、臨床解剖学として捉え直すと解剖学が鮮やかな視点で学べました。
その後実習のデモを行なって頂けたのですが、鮮やかな手つきで見惚れてしまいました。
お昼休憩を挟んで、秩父臨床デンタククリニック院長の栗原仁先生から、エンドサージェリーと小臼歯の解剖、小臼歯根管重点の実習のデモがありました。
エンドサージェリーとは、通常の歯内療法では治せない時に行う外科処置のことです。
歯根端切除と意図的再植の2種類の外科処置を主にエンドサージェリーでは行います。
根管充填に問題がないのに、根尖性歯周炎が治らない場合に歯根端切除を行います。
前述した根尖性歯周炎とは、根っ子のさきに膿の袋ができることだと説明させてもらいました。
歯根端切除とは、歯茎を開いて膿の袋と歯根(歯の根っ子のことです)の先端3ミリを除去する処置です。
根尖性歯周組織炎とは歯根が原因で、歯根の先に病変となる膿の袋ができることです。
根管充填に問題がなくても根尖性歯周組織炎が治らないのは、歯根の先端3ミリに問題があること注4がほとんどです。
そのため、感染源となっている歯根の先端3ミリを除去します。
これを行うことでかなりの確率で治癒するといわれています。
ですが、上顎洞や下歯槽管などの解剖学的制約で歯根端切除を行えないことがあります。
その場合は、意図的再植といって、一旦歯を抜いて歯根の先端3ミリを切除して、膿の袋も取り、戻す方法があります。
こちらの処置は歯根の形という解剖学的制約を受けます。
また処置に手間取ると再着しないということもあります。
エンドサージェリーは、あくまでも通常の根管治療の補完的な治療であり、絶対的なものではありません。
たまに患者さんで、エンドサージェリーを勘違いしている方がいますが、あくまでも補足的な処置でしかなく、通常の根管治療が主流の治療です。
あくまでも条件が整えばできる処置でしかありません。
講義では歯根端切除のアドバンスな話をされていました。
非常にレベルが高くイメージがつかないような術式ですが、ここまでの手技ができるのかと、修練へのモチベーションが高まりました。
小臼歯の解剖では、根管口の数の破格注5についても詳しく教えて頂き、根管への3次元的な理解が深まりました。
マイクロスコープを使用して、実習のデモを行っていただいたので、どのように根管が拡大されていくのかが手にとるように理解できました。
高崎ハルナモ歯科では、一般歯科のみではなく、インプラント、矯正、ダイレクトボンディング、審美修復などの高度な歯科治療を提供できるように、常に研鑽を行っております。
なにか、お困り事がございましたら、気楽にご連絡をください。
注1:根管とは、歯髄が走行している空間のことです。
注2:デンタルとは、3歯から4歯程度を写せるレントゲンのことです。
注3:パノラマとは、顎関節までを含めた上下の顎を写せるレントゲンのことです。
注4:歯根の先端3ミリに、副根管という非常に細い根管が網目状に走っていることがあります。メインの根管をキレイにしても、副根管は細すぎてキレイにできないことがあります。そのため、歯根端切除では、歯根の先端3ミリを取ります。
注5:破格とは、平均的な人体の構造とは違うことを意味します。