ONE COURSE 2024 TOKYO第3期の第3回目と第4回目に参加してきました。
- 2024年11月25日
- ONE COURSE,学会・セミナー等
いつもお世話になっております。高崎ハルナモ歯科の深澤です。11月16日(土)、17日(日)は医院をお休みさせて頂き、洪性文先生が講師を務められるオステム主催のONE COURSE 2024 TOKYOの第3回目、第4回目に行ってきました。
オステムは、インプラントでは現在世界第3位の実績をもつ韓国のメーカーです。インプラントをオステムに切り替える著名な先生方もいるくらい、勢いがあります。インプラント埋入中に、径を太いのに変えたい、長さを変えたいなどを思うことがあります。メーカーによっては、完全未開封でも交換に対応してくれないところもあり、直径や長さを変えるのに躊躇してしまうことがあります。オステムは術中に開封した場合でも、インプラントを無償で交換をしてくれます。治療を受ける患者さんのために、無償で交換をしてくれる企業姿勢がユーザーから高く評価されています。
講師の洪性文先生は、審美領域の抜歯即時埋入やサイナスリフトなどの高難易度のインプラント処置で、有名な先生です。第3回と第4回のセミナーでは、ちょうど抜歯即時埋入とサイナスリフトがテーマだったので期待に胸を膨らませて、会場に向かいました。
洪先生が体調不良等で遅れてお見えになるとのことだったので、洪先生のお弟子さんの一人である岡先生が、審美領域の待時埋入についての講義と実習を担当されました。待時埋入とは、抜歯窩が完全に骨に置換された状態で埋入することをいいます。一方即時埋入とは、抜歯と同時にインプラントを埋入することをいいます。ちなみに審美領域とはヤエバからヤエバの間に並んでいる歯をいじることをいいます。埋入位置の原則について確認した後に、埋入実習を行いました。審美領域なので、通常の閉創とは違いPalacciの切開(Palacciのフラップともいいます)をおこなった後に縫合という流れでした。待時埋入では歯肉の形態が平坦化してしまい、歯間乳頭が消失してしまいます。臼歯部などの奥歯では歯間乳頭が消失しても、問題になることは少ないのですが、審美領域では歯間乳頭が消失してしまうとブラックトライアングルが生じてしまい、見た目に問題が生じることがあります。そのため歯間乳頭の再建を目的にPalacciの切開をおこないます。その際の縫合は通常の縫合では緩んでしまうことがあるため、水平マットレス縫合の変法で今回は行いました。Palacciの切開は昔教科書で読んだことはあったのですが、実際におこなったことはなかったので非常に勉強になりました。
その後、洪先生がお見えになり、審美領域での抜歯即時についてのレクチャーが始まりました。待時埋入と抜歯即時で埋入位置に違いはないのですが、インプラントと骨の間にできるギャップをどうするかと、初期固定を得るための工夫が必要になります。抜歯後から骨は段々と薄くなってなっていき、粘膜は歯間乳頭などがなくなり平坦化していきます。抜歯即時埋入では、抜歯前の骨や粘膜の状態を維持することを目的に行われます。理想的な位置にインプラントを埋入したとしても、骨とインプラントの間に隙間ができます。ここに補填材という人工骨をいれることで、骨の菲薄化を防ぎボリューム維持を図ります。それでも、1mm程度は吸収がおきてしまいますが臨床上は問題にはなりませんし、見た目に影響を与えることもほとんどありません。ただ患者さんの中には、見た目にほとんど影響がないとしても3次元的な形態を可能な限り保存してほしいという方もおられます。そういった方にはソケットシールドテクニックやCTGが必要になることがあります。かなりアドバンスなため術式の紹介のみで、実習は行いませんでしたが良い復習になりました。粘膜を保存するためには、プロビショナルレストレーションという上部構造を入れる必要があります。仮歯を入れるためには、確実に初期固定が得られないといけません。初期固定を確実に得るためのテクニックがあり、それも実習を通して教えて頂きました。
プロビショナルレストレーションの作製に関する考え方は、洪先生とタッグを組んでいる歯科技工士の鈴木さんが担当されていました。インプラントから被せ物への立ち上がりをカントゥアといいますが、ここの形態を最終的な被せ物(=ファイナル)とは違い極端な立ち上がりにすることで、ファイナルの歯頚部の形態がよくなるなどを教えて頂きました。その後、洪先生がデモを行い、実習に入りました。オステムではガイドを作る時に、一緒にプロビショナルの作製もお願いできるので、非常にシームレスに処置を進めることが可能です。実習終了後は懇親会が開かれ、インプラントに限らず色々な歯科の情報交換をさせて頂きました。
翌日の17日は、サイナスリフトについて終日費やしました。サイナスリフトは、アプローチ方法でクレスタルとラテラルがありますが、今回はラテラルについてでした。まずは上顎洞の解剖学から入りました。サイナスリフトがテーマの講義では、解剖から入るのは鉄則ですが、今回は少し切り口が違っていました。人間の頭部には、篩骨洞、蝶形骨洞、前頭洞、上顎洞から構成される副鼻腔というのがあります。上顎洞のみではなく、残りの副鼻腔の構造まで含めて講義をしてくだだったので、術後の症状などへの理解がより深まりました。
その後、安齋先生から抗菌薬の投与方法の考え方の講義がありました。ガイドラインでは何が推奨されていて、ガイドラインには記載がない投薬をどうするかは非常に興味深い講義でした。歯性感染症の分類にもとづき原因菌が偏性嫌気性菌か嫌気性菌かに分けて投与方法を変えるのは、なるほどと納得しました。
実習では、カスキットを使ってのクレスタルアプローチの実習を行いました。クレスタルアプローチは従来法では、オステオトームテクニックという方法で行っていました。この方法は上顎洞の手前まで骨を削り、オステオトームという器具で一層残った骨を若木骨折させた後に補填材をいれ、更に粘膜を持ち上げていく方法です。文章で書くとわかりずらいですよね(笑)。簡単にいうと、治療中ずっとトンカチで叩かれている感じがするということです。オステムから販売されているカスキットでは、先端が粘膜を傷つけないように作られた特殊なドリルの長さを1ミリ単位で調整して粘膜下直下まで骨を削り、粘膜を水圧で持ち上げる方法を取ります。水圧を利用するので、患者さんの不快感はオステオトームテクニックより格段に軽減されます。他のインプラントメーカーを使用していても、カスキットのみ採用している先生がいるくらい、画期的な機材です。私もインプラント治療を始めてから、このカスキットにはお世話になっています。
今回の実習では理想的な上顎洞底のみではなく、傾斜のついている上顎洞底や多数歯埋入を想定した実践的な内容でした。水圧で持ち上げることをハイドロゲーションともいいますが、傾斜のある上顎洞底ではハイドロゲーションをうまく利用することで穿通の可能性をかなり低くできます。ハイドロゲーションに使用するのは生理食塩水なので体への負担などは全くなく、処置時間が延びるわけでもないので非常に有用なテクニックだと思いました。また補填材の材質について洪先生に、良い質問だと褒めていただけたのはかなり嬉しかったです。
医院をお休みさせて頂き、土日しかお見えになれない患者さんにはご迷惑をお掛けして申し訳ありません。良い医療を提供するためには、一流の先生から手ほどきを受ける必要があります。ご理解をご協力を賜われれば幸いです。