THE All-on-4&Zygomaの第1回目と第2回目に行ってきました。
- 2025年4月29日
- DOUBLE TOKYO,学会・セミナー等
いつもお世話になっております。
箕郷町コープの敷地内で開業している高崎ハルナモ歯科院長の深澤です。
2024年12月7日(土)と8日(日)は医院をお休みにさせて頂き、橋村吾郎先生が主催されるDOUBLE TOKYOが企画した、THE All-on-4&Zygomaに参加しました。
All-on-4とは、ポルトガルのリスボンで開業されているパウロ・マロ先生が1998年に開発された無歯顎に対してのインプラント治療の方法です。
人間の歯は親知らずを除くと上の歯が14本、下の歯が14本の計28本の歯があります。
無歯顎とは、上の歯又は下の歯が全てない状態のことをいいます。
All-on-4では無歯顎の患者さんの口腔内を、4本のインプラントで見た目と機能を回復させます。
しかも、インプラントを埋入した日にプロビ(暫間的な仮歯のことです)を入れるので、その日に歯が入っている状態になります。
橋村吾郎先生は、日本にAll-on-4が導入されはじめたころに、リスボンのマロ先生のもとで技術指導を受けられ、現在ではAll-on-4の日本のオーソリティの一人です。
THE All-on-4&Zygomaは、募集開始になるとすぐに定員に達してしまいます。
自分は申し込んだ時には、定員になっており、事務局の方のご厚意で、申し込んだ期の次の会で参加することができました。
しかも、なんと幸運なことに講師の目の前という特等席で受講することができました。
All-on-4では上顎は前歯のあたりに左右に2本、奥歯のあたりに左右2本を埋入します。下顎も同じように、前歯に左右2本、奥歯に左右2本埋入していきます。
上顎の前歯では、鼻腔底の皮質骨(注1)を狙って埋入します。
通常のインプラントでは、鼻腔底直下まで届く長さのインプラントはありません。
そのため、All-on-4では通常よりかなり長いインプラント(注2)を使用します。
上顎の奥歯がある辺りは、上顎洞という空間があります。
上顎洞がある辺りにインプラントを埋入する場合、上顎洞までの距離が短いと上顎洞底挙上術という、上顎洞の粘膜を持ち上げる処置をしなければなりません。
All-on-4では傾斜埋入と言って、上顎洞をさけるようにインプラントを斜めに埋入します。
上顎洞底挙上術を行った場合、ラテラル(注3)かクレスタル(注4)かによっても変わってくるのですが、実際に歯を入れられるようになるまで、半年から1年強程度かかります。
傾斜埋入をすることによって、骨造成(注5)をすることなく埋入するので、治療期間の短縮を図れます(注6)。
下顎の前歯にも通常よりも長めのインプラントを埋入します。
下顎の奥歯も、上顎と同じように長めのインプラントを傾斜埋入します。
下顎の骨の中には、神経と血管が走っている下顎管という管がありますが、傾斜埋入することで、下顎管の走行を避けて埋入することが可能になります。
All-on-4は斜めに埋入するため、角度も重要になってきます。
角度がズレると上顎洞や下顎管に損傷を与えてしまったりする可能性があります。
そのため通常All-on-4は、通常ガイデッドサージェリーで行います。
ガイデッドサージェリーとは、CTや模型でシュミレーションした位置に埋入するためのマウスピースを使用して、インプラントを埋入することです。
このマウスピースには、ドリルの方向を指示(ガイド)するための穴があります。
その穴にドリルを入れて、手術を進めていくと、インプラントの埋入予定位置がズレることなく進められます。
昔は、このようなガイドを作ることなく手術が進められていましたが、現在はほとんどガイデッドサージェリーで行うため、患者さんに安全かつ短時間の手術が可能になりました。
現在の最先端は、ナビゲーションシステムを利用しての手術が可能になりました。
これは、ドリルの先端を光学機器で補足し、予定どおりの位置や角度を知らせてくれるシステムです。
誤差も少なく、マウスピースのように装着する必要もないので手術中も邪魔になることはありません。
All-on-4は、歯がない人だけが適応になるわけではありません。
虫歯や歯周病で、歯がボロボロになった人も治療の対象になります。
その場合は、その日に、すべての歯を抜いて、同日にインプラントをいれて、プロビをいれることも可能です。
患者さんには福音の大きい治療ですが、欠点もあります。
抜歯もして、インプラントもいれ、プロビをいれてと、やることが多いので治療時間が長くなります。
大体、ほとんど丸1日が治療でつぶれます。
自費診療になるので、治療費も高くなります。
医院によって違いますが、車1台分かかります。
ボロボロの歯を抜いて、All-on-4nに置き換える場合、保存可能な歯も抜く必要があります(注7)
欠点もありますが、ほとんど自分の歯と同じように噛め、見た目もほとんど治したとわからないくらい(注8)自然な歯が入ります。
実習では、フリーハンド(注8)での上下顎へのAll-on-4埋入実習を行い、その後ガイド下(注9)での上顎All-on-4埋入実習とプロビ装着を2日間で行いました。
先ほど、All-on-4の埋入では通常ガイデッドサージェリーを使用するといいましたが、かつてはフリーハンドで埋入を行っていました。
橋村先生も通常はガイデッドサージェリーでの埋入を行っているそうですが、今回の実習ではフリーハンドでの埋入がいかに難しく、ガイデッドサージェリーの恩恵が大きかを実感してもらうために、体験としてフリーハンドでの実習を行っているとお話をされていました。
模型での埋入であっても、フリーハンドでの埋入は難しく、微妙な角度や埋入位置などがズレてしまいました。
3次元的な位置関係に注意を払わなければならないのですが、どうしてもドリル操作などをおこなうとドリルの先端に注意が向いてしまいます。
そうすると、微妙な角度などがズレてしまいます。
橋村先生も過去、フリーハンドでやっていた時は微妙に位置がズレて、その後のプロビ装着に苦労したことがあったとお話されていました。
その後、ガイデッドサージェリーでの埋入を行うと、嘘のように処置の難易度が下がり、また時間も短縮しました。
ガイデッドサージェリーを使用することで、ドリル先の位置や角度にあまり注意を払わなくて良くなり(注10)、次の処置を考えながら行えることが時間短縮に働いたのだと思います。
橋村先生の仰る通り、ガイデッドサージェリーの優位性をまざまざと実感しました。
プロビ装着実習では、ガイデッドサージェリーで埋入しているので位置のズレもほとんどなく、比較的スムーズに装着することができました。
現段階では無歯顎の方への治療として、ベターな治療方法はAll-on-4だと思います(注11)。
All-on-4を成功させるためには衛生士や技工士との連携は絶対に欠かせません。
当院では、そのためのスタッフ教育や、技工士との定期的な打ち合わせを行っております。
All-on-4でのご相談が御座いましたら、気楽にお申し付けください。
高崎ハルナモ歯科では、一般歯科のみではなく、インプラント、矯正、ダイレクトボンディング、審美歯科などの高度な歯科治療を提供できるように、常に研鑽を行っております。
なにか、お困り事がございましたら、気楽にご連絡ください。
注1:前歯の骨のすぐ上に鼻腔という、鼻を吸ったときに空気が通る空洞があります。鼻腔底とは、この空洞の一番下のことです。骨は、柔らかい海綿骨を取り囲むように皮質骨という硬い骨があります。All-on-4では、初期固定を硬い皮質骨に求めます。上顎の前歯相当部では、鼻腔底の皮質骨を利用します。
注2:通常10ミリ程度を利用することが多いですが、All-on-4では15ミリから18ミリの長いインプランを利用します。
注3:ラテラルとは側方という意味で、上顎洞底挙上術を行う際に奥歯がある頬側の粘膜を開けて上顎洞にアプローチする方法のことです。
注4:クレスタルとは歯槽部という意味で、上顎洞底挙上術を行う際に歯があった粘膜から開けて上顎洞にアプローチする方法のことです。
注5:骨造成とは、骨を人工的に作ることです。
注6:骨造成を行わないでインプランを埋入すると、だいたい3ヶ月くらいで型取りまですすめますが、骨造成を行う場合型取りまでに5ヶ月から1年近くかかります。
注7:All-on-4では全ての歯をインプラントに置き換えるので、保存可能な歯を抜く必要があります。保存可能な歯であったとしても、All-on-4を必要とする患者さんの歯は歯周病やう蝕に侵されており、保存するための処置を行っても、歯としての寿命は短い場合が多いです。また、中途半端に歯を残すことにより治療計画が複雑になったり、治療期間が長くなったり費用が高くなったりします。それらのことを患者さんとお話をして決めていきます。
注8:フリーハンドとは、ガイデッドサージェリーを利用しないで埋入することをいいます。
注9:ガイデッドサージェリー用のマウスピースを使用して埋入することを、ガイド下での処置といったりします。
注10: ガイデッドサージェリー用のマウスピースを装着してインプラント埋入を行うと位置決めした方向にしか、インプラントを入れられないため、フリーハンドより注意を向ける必要がなくなります。
注11:All-on-4は、保存可能な歯も抜歯したり、リダクションと言って骨をフラットにするために骨を削ったりします。そのため、時間や費用がかかってもしっかりと骨造成をしたり、保存修復処置をおこなうべきだという意見もあります。